- はじめに
- NFT-Fiとは
- 分割NFTとは
- Fractional.artでのThe Doge NFT分割
- DODOの分割NFT機能実装とDODO Minions NFT
- MEXCによる中央集権型分割NFT
- 分割NFTが現在実現しているソリューション
- 灯篭が予想する分割NFTの未来
- おわりに
はじめに
この分野はリアルタイムに産声を上げはじめたばかりの領域です。
執筆終了時の日付が2022年5月3日であり、今のあなたがこれを書いている私よりも少し未来を生きているのであればこの記事の情報が古くなっているかもしれません。そのときは、答え合わせでも楽しみましょう。
「NFT-Fiって何?」「分割NFTって何?」ってくらい未だ知られてない領域なのでまずは言葉の説明から。
NFT-Fiとは
私が勝手に使ってる造語です。
NFT×DeFiです。ようするにDeFiを使ってNFTの可能性をさらに拡げるような領域のことを指しています。Deの部分が抜けてるので、まだ悩んでます。ブログ書くために一応ここではこのワードで統一していきます。
(DeNFTFiとCeNFTFiにわけるべき?)
DeFiが流行る以前(多分18年あたりまで)の世界の人にNFTを説明するくらい、NFTでDeFiするなんてこと自体、イメージがまだ湧きづらいと思います。
主に現時点で公に開発されている / 開発されていると思われる分野は以下の通りです。
・分割NFT
・NFTレンディング
・NFTのDEX
・NFTのネットワーク間ブリッジ
・FTのNFT化
分割NFT以外の各分野に関してもここで触れるとスクロールバーが1ピクセルの長さもなくなってしまいかねないので今回は割愛します。
分割NFTとは
NFT-Fi領域で最初にローンチされてきたのが分割NFTです。
分割NFTというワードも勝手にそう訳してるだけで今後別のワードが定着する可能性がりますが、原文ではFractional NFTまたはFraction NFTと呼ばれます。また、分割することをFractionalizeと言ったりします。
現状の基本は「NFTを担保にFTを発行する」という仕組みです。つまり分割NFTはFTであり、NFTではありません。
Fractional.artでのThe Doge NFT分割
かぼすちゃんの分割
私の観測する限り一番早かった分割NFTはFractionalというプロダクトから発行されたかぼすちゃんのNFTを分割したものです。
Dogecoinのアイコンにもなっている最も有名なネットミームかぼすちゃん。その飼い主のかぼすママさんが発行したNFTは2021年6月にチャリティーオークションで約4.7億円で落札されました。
このかぼすちゃんのNFTはThe Doge NFTと呼ばれ、Fractional.artというプラットフォームで分割されることになります。このニュースがほんの少しだけ分割NFTが脚光が浴び最初の瞬間であると認識しています。ほんの少しだけだけど。
Fractional.artのNFT分割ルール
- プールにNFTをロックすることで分割NFT(FT)を発行
- このFTはFractional.art上などで売買可能
- このFTの供給量の100%を持っているとプールに持っているNFTと交換することが可能(但し、一度流通したトークン全てを集めるのは非現実的)。
- 供給量の50%以上を保有すると担保になってるNFTのオークションを開始させることが可能。このオークションでの落札に使われるETHはFT保有者に比例分配される。
世界初の分割NFTのCEX上場
MEXCは2021年9月にThe Doge NFTの分割NFTを $DOG として上場しました。分割NFTが初めてCEXに上場した瞬間です。
DODOの分割NFT機能実装とDODO Minions NFT
マルチチェーンに展開する分散型取引所&DEXアグリゲータープロトコルであるDODOは2021年11月にプラットフォームでNFTの分割と分割NFTの取引、分割NFTを用いたNFTの販売などの機能を実装しました。また、Fractional.artがEthereum上でのみ展開しているのに対して、DODOの分割NFTはEthereum、BNB Chainへ対応しています。
DODOのNFT分割ルール
- バイアウトモードで発行するか、リテールモードで発行するかを選択し、プールにNFTをロックすることで、分割NFTを発行
- バイアウトモード:分割NFTの時価総額を支払うことで担保のNFTを購入できる
※支払われた金額はFT保有者へ比例分配 - リテールモード:指定量の分割FTを支払うことでプール内のNFTと交換できる
※プールに複数のNFTをロック可能
DODO Minions NFTによるユニークなユースケースの提案
DODOは分割NFTの発行とマーケットプレイスを実装しただけではなく、DODO Minions NFTと呼ばれるNFTコレクションのリリースも行いました。
DODO Minions NFTではリテールモードを利用してたくさんのNFTを担保にDNAトークンを発行しています。
5,000 DNAでDODO Minions NFTを購入することが可能でした(完売済)。
このDODO Minions NFTにはさらなる特徴があります。
DODO上の特設ページでNFTを分解して顔や背景、頭飾りなど6種のパーツNFTにすることができます。このパーツNFTも先ほどのDNAトークンの担保になっているプールにたくさん入っており、1,100 DNAで好きなパーツを、1,000 DNAでランダムなパーツを購入することができます。
各パーツNFTを組み合わせて1つのNFTにして自分だけのDODO Minionを組み立てることができるという着せ替え人形のようなNFTを実現しました。
MEXCによる中央集権型分割NFT
MEXCは一早くDOGトークンを上場した、意外(?)と分割NFTに対して意欲的な中央集権型取引所です。
2022年4月、MEXCはCLONEX、MEEBIT、STEPNのNFTを集め、それを担保にしたNCLONEX、NMEEBIT、NSTEPNというFTを発行して自社で上場するという非常に興味深い動きを見せました。
どれもおおまかなルールは同じなので、ここではその中でも特に脚光を浴びたNSTEPNを例に説明します。
MEXCの靴分割ルール
- MEXCは自社でSTEPNの靴300点を収集
- 300点の靴NFTを担保に3億NSTEPNを発行
(入出金不可なので厳密にはデリバティブの可能性もあり。担保をコントラクト上でロックしているわけではないと思われるので、当然要フルトラスト) - NSTEPNを自社取引所に上場
- 100万NSTEPNを保有すると靴NFT1点と交換可能
このルールの興味深いところは2点。まずなんといってもDeFi領域で行われていた分割NFTをCeFiで実現したところ。
そして、Fractional.artのルールのように「供給量の100%を集めるのは実質不可能だろ!」っていう部分に対して担保のNFTを300点用意することで供給量の1/300で交換可能としたところ。
中央集権型分割NFTという新たなジャンルは現象として個人的には非常に興味深い。
分割NFTが現在実現しているソリューション
流動性向上
例えば、BAYCのNFTを1つ購入しようと思ったら非常に大きな資金が必要です。よって、BAYCで投機したいけど、BAYCのNFTが欲しいけど高すぎて購入できないって人たちの分、BAYCのNFTを売りたいけど1つ丸々売りたくはないという人たちの分、BAYCは流動性を獲得し損なっています。
分割NFTは高価なNFTをたくさんのFTにわけることで取引に必要な資金量のハードルを無制限に下げることで、少額資金でも高価なNFTに触れたい人や、少しだけNFTを売りたい人の需要を満たします。”1,000円分だけBAYCのNFTを購入する”を可能にしたということです。
価格発見
NFTは、買うか売るかしか現状の選択肢が無いのでその相場観というのは非常にわかりづらいものがあります。しかし、これを分割してFTにすることで一般的なトークンと同じような売買が生まれ、その需要と供給に応じた価格発見をすることができます。
簡単に言えば、チャートを作ることができるということです。
DEXでの流動性提供&取引
FT化したことで、DEXに流動性を提供したりDEXで取引を行うことが可能になります。例えば、The DOGE NFTは本来OpenseaなどのNFTマーケットプレイスでしか取引できませんが、DOGに分割されたことでUniswapなどのDEXでETHやUSDTなどのトークンと取引することができるようになっています。
灯篭が予想する分割NFTの未来
分割NFT同士での交換
DEXで流動性さえ提供されれば、すぐに実現可能です。
CryptoPunksの分割NFTをBAYCの分割NFTと交換する、といったことが可能になります。分割NFT同士での流動性プールで流動性の提供を行うのも興味深いでしょう。
DEX以外のDeFiでの活用
分割NFTはFTなので、他のFTと同じようにDeFiで運用することができます。一番想像しやすいのはブリッジでしょうか。DOGトークンをBNB ChainやPolygonにブリッジするプロトコルが出てくるかもしれません。レンディングプロトコルで貸し借りができるようになるかもしれません。他にも色々...ここからはご自身で想像してみましょう。。。
分割NFTガバナンストークン
分割NFTをガバナンストークンとするNFTプロジェクトが生まれるものと予想しています。NFT×ガバナンストークンというアイデアはGameFi領域での活用にも相性が良いでしょう。メタバース上の土地や建築物などを複数人で所有するのにも使えます。担保になってる不動産NFTが生み出した賃料、広告費を分配するなんて熱くない?
NFT ETF
複数種類のNFTを担保にNFTを発行することで、NFT世界のETFを生み出すことが可能であると考えられます。
例えば、Crypto PunksやBAYC、Meebitなどの大手NFTコレクションを少しずつ担保にして分割NFTを発行したらそのトークンはNFT市場全体の熱量を示すETF、インデックスのようなものになり、取引しなくとも便利な指標となるでしょう。
日経平均株価のNFT版みたいなものができるかもしれないということです。というか株式自体が株式会社というNFTを担保に発行した分割NFTガバナンストークンみたいなものだったりもします。
その他、Decentralandの土地、Sandboxの土地、Othersideの土地を担保に発行したメタバースランドETFなんかもいいですね。
各いくつ担保にするかが悩みどころですが、大手GameFiのNFTを色々混ぜたGameFi ETF、既にこれらが今実現されていたら、STEPNの靴などのMove to Earn NFTを色々担保にしたM2E ETFなんかも生まれていたのではないかと思います。
Uniswap V3の流動性NFTを分割した何か
NFTといえば、アートやゲーム、土地だけでなくDEXで金融的に使われていたりもします。Uniswap V3などのDEXではLPトークンがNFTで発行されます。このNFTをさらに分割して何かする、なんてプロジェクトが生まれるかもしれませんね。
おわりに
分割NFTのこれまで、これからはどうでしたか?分割NFTを含めたNFT-Fi領域は完全にブルーオーシャンであり殆どローンチもされていませんし、ローンチされたなかでもまだ流行ったと言えるものはありません。しかし「NFTでDeFiする」というムーヴメントはきっと近い将来大きなムーヴメントになるのではないかなと思います。そんな世界をたまたま超至近距離で日々見ているので、この機会に記事にしました。
この記事がNFTと金融のコンビネーションが創造する未来を想像するきっかけになっていただけたら、少しでもワクワクしていただけたら幸いです。
そして、この記事を読んだ人でこの広いブルーオーシャンで巨人になる人が生まれたらいいな、なんて思ったり。
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